給与は、通貨(現金)で支払うのが原則である(労働基準法第24条第1項)が、労働者の同意があれば銀行・証券会社等の本人口座(以下、本稿では「銀行口座等」と呼ぶ)へ振り込むこととしてもよい(労働基準法施行規則第7条の2第1項第1号・第2号)。
 また、令和6年8月からは、厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者(「〇〇ペイ」と称するものが多い;令和7年5月時点で4業者が指定されている)の口座へデジタル払いすることが可能となった(同条同項第3号)。
 ただし、給与のデジタル払いには次のような条件(例示。他にもあり)が付いている。
  (1) 口座残高上限額100万円以下(現在の指定業者は10万円~30万円)
  (2) (1)の上限を超える額を受け取る銀行口座等を労働者が予め指定しておく
  (3) 資金移動業者が破綻した場合に6営業日以内に弁済できる保証システムを設ける
  (4) 最後に口座残高が変動した日から10年以上有効
  (5) ATM利用により現金を1円単位で受け取れる(少なくとも月1回は無料)
  (6) 銀行口座等へ1円単位で資金移動できる
  (7) 業務を適正かつ確実に行える技術的能力と十分な社会的信用を有している

 これに対し、先ごろ、内閣府の規制改革推進会議が注文を付けた。
 すなわち、(2)について「例えば外国人が本国に有する銀行口座への送金やATMによる返還等の代替的手法を認める」、 (3)について「金融庁の金融審議会(資金決済制度等に関するワーキンググループ)での議論と連動して資産保全要件の廃止又は大幅な緩和を行う」、(5)について「紙幣単位での払い出しを認める」等の見直しを厚生労働省に求めたのだ。
【参考】内閣府 > 『規制改革推進に関する答申』(P.116-117)

 これを受けて厚生労働省は、労働政策審議会労働条件分科会の議題に上げ、6月6日から検討を始めた。
 ただ、給与のデジタル払いに様々な条件が設けられたのは、賃金支払いに関する安全性と確実性を考慮したという経緯もあるので、見直しには各方面からの反発も予想されよう。
 とは言え、デジタル化の推進は社会の要請でもあるし、労働者の利便性を向上させる意味からも、あまりに厳しい条件は見直さざるを得ないだろう。



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