先ごろ、今年10月からの最低賃金が公表され、特に東京など都市部において大幅な引き上げとなることとなった。
これを踏まえて民間企業としては、賃上げ分を取引価格に転嫁することを検討しなければならないかも知れない。
一方で、発注する側の立場としては、受注業者が取引価格の見直しを要請してくることも想定しておかなければならないだろう。
このことに関しては、令和5年11月、内閣官房と公正取引委員会が連名で『労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針』を発している。
その概要は次のようなものだ。
[発注者として採るべき行動/求められる行動]
(1) 取引価格への転嫁を受け入れる取組方針を経営トップまで上げて決定すること
(2) 定期的に労務費の転嫁について発注者から協議の場を設けること
(3) 説明・資料を求める場合は公表資料とすること
(4) サプライチェーン全体での適切な価格転嫁を行うこと
(5) 要請があった場合に、協議のテーブルにつくこと、不利益な取扱いをしないこと
(6) 必要に応じ考え方を提案すること
[受注者として採るべき行動/求められる行動]
(7) 国・地方公共団体・中小企業支援機関の相談窓口などを活用すること
(8) 根拠資料としては最低賃金の上昇率などの公表資料を用いること
(9) 受注者の交渉力が比較的優位なタイミングなどの機会を活用して行うこと
(10) 発注者から価格を提示されるのを待たずに自ら希望する額を提示すること
[発注者・受注者の双方が採るべき行動/求められる行動]
(11) 定期的にコミュニケーションをとること
(12) 価格交渉の記録を作成し、発注者と受注者と双方で保管すること
そして、発注者がこの12項目に従わず公正な競争を阻害するおそれがある場合には、公正取引委員会において独占禁止法・下請代金法に基づき厳正に対処する旨も明記されている。
この指針は今も(というより今でこそ)効力を発揮しそうだ。
6月13日に閣議決定された『経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太方針2025)』は、「2029年度までの5年間で、日本経済全体で年1%程度の実質賃金上昇(=持続的・安定的な物価上昇の下、物価上昇を1%程度上回る賃金上昇)をノルムとして定着させる」とし、具体的な数字として「2020年代に全国平均1500円という“高い目標”」を掲げている。
今や、賃上げは、各企業の経営努力で何とかする課題ではなく、社会全体で取り組まなければならない課題になってきていると認識するべきだろう。
文責: 特定社会保険労務士 神田 一樹
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