厚生労働省は先ごろ、賃金不払いが疑われる事業場への監督指導について公表した。
 それによれば、令和6年は件数・対象労働者数・不払い金額のいずれも前年より増加している。
 また、公表された指導内容を見ると、かつてのような単なる給料の未払いや遅配(会社倒産に伴うものを含む)よりも、「始業前の準備作業」などの業務を労働時間としてカウントしていないケース(これも賃金不払い残業の一種)が目立った印象だ。

 では、ここで改めて、どのようなものを労働時間に含めるべきか、あるいは含めなくてよいのか、誤解されやすい事例に絞って説明してみる。

 まず、「通勤時間」は、会社が労務の提供を受けていないので、労働時間ではない。
 建設業従事者が現場に直行するのも、飛び込み型の営業職従事者が担当地域から直帰するのも、「通勤」になる。
 ただ、会社が用意した送迎車に乗っている時間については、賃金支払い義務は発生しないものの、乗車中に事故が起きて従業員が負傷した場合には労災保険では「通勤災害」でなく「業務災害」として取り扱われることは覚えておきたい。

 出張(社外での業務)における移動時間については、その性格によって判断が異なる。
 一旦出社した後に用務先に向けて移動するケースなら明らかに業務であるが、自宅から直行(または自宅へ直帰)するケースでの移動時間は、原則として労働時間に含めなくてよい。 裁判所も「通勤時間と同じ性格を持つ」(横浜地判S46.1.29など)との判断だ。
 ただ、就業規則で「始終業時刻において移動途上に在る場合には遅刻または早退の扱いをしない」と定めている会社も多く、そうした配慮はむしろ合理的と言えるだろう。
 なお、移動中は原則として労働時間ではないと言うものの、移動中に行うべき業務を指示している場合は別だ。 商品や機材や重要書類等を運搬させたり(運送業従事者に限らない)、昨今では移動中にリモート会議への出席を命じたりといったケースでは、労働時間に含めなければならないことになる。

 それから、会社が着用を義務づけているユニフォームの着脱に要する時間も労働時間になり(最一判H12.3.9)、それが始業前や終業後に行われているなら時間外労働となる。
 ただし、これとて、ユニフォーム姿でいる間がすべて労働時間であるわけではなく、例えば休憩時間中や任意参加の始業前体操等については、労働時間に含めなくてよい。

 概括すれば、「会社が命じて(黙示の命令を含む)労務の提供を受けている時間は労働時間に含めなければならない」ということであり、当然と言えば当然の話ではある。



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