不幸にして個別労働関係紛争(従業員と会社との間における労働に関する争いを言い、労働組合と会社との間の“集団的労使紛争”は含まない。また、ハラスメント事案等に代表される従業員間の争いも含まない)が生じた際、地方裁判所や簡易裁判所における民事訴訟の他、裁判外紛争解決手続き(ADR)を利用した解決が図られることがある。
労働紛争に関しては前置主義の適用が無く、いきなり訴訟を提起することも許されるが、訴訟には厖大な時間・費用・労力を費やすため、ADRの利用件数は年々高まっている。
さて、個別労働関係紛争に係るADR制度には、地方裁判所が窓口となる「民事調停」や「労働審判」、都道府県労働局または都道府県労働委員会が窓口となる「あっせん」、広い意味では「行政機関への助言・指導の申立て」等があるが、訴訟に似た形で進行する「労働審判」と「あっせん」について、以下、少し細かく説明してみたい。
1.労働審判
・労働審判官1人と労働審判員2人で構成される「労働審判委員会」で審理される。
・原則として3回以内の期日(2~3か月)で決着する。
・審理期日にすべての証拠(証人を含む)を揃えないといけない。
・調停が整わなかった場合に下される労働審判に異議を申し立てると訴訟に移行する。
・労働審判の申し立ては、弁護士が代理できる(司法書士は代理できない)。
2.あっせん
・あっせん委員(公労使の3者)3人で構成される「紛争解決委員会」が調整に当たる。
・原則として1回の期日で終わる。
・当事者の言い分をそれぞれ別の部屋で聴き取った後、あっせん案をまとめる。
・双方ともあっせんに応じる義務はなく、あっせん不調となるケースも多い。
・あっせんの申し立ては、弁護士の他、特定社会保険労務士が代理できる。
(ただし、民間ADRにおいては訴額120万円を超える事件は弁護士と共同受任)
これらのうち、会社側が主体的に用いやすいのは「あっせん」だろう。
訴訟をはじめ他の制度も法文上は会社が原告(または申請人・申立人)になることを想定しているが、あっせんは「互いに譲歩しあう」という点で、会社側から申し立てても不自然でない。
また、あっせんは、“和解”での解決を目指すことから、その後の人間関係を維持したいという気持ちがあるならば(労働紛争に関してはこういう傾向が顕著)、活用を考えるべき制度と言える。
文責: 特定社会保険労務士 神田 一樹
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