法人の役員(健康保険に関しては満75歳未満、厚生年金保険に関しては満70歳未満の者に限る)は、原則として、健康保険・厚生年金保険の被保険者(以下、本稿では単に「被保険者」と呼ぶ)となる。
 そして、法人の役員として被保険者になった場合、その者に個人事業主としての所得があっても、個人として国民健康保険料(または国民健康保険税)・国民年金保険料は課せられない。

 昨今、この仕組みを悪用して、個人事業主を役員に就任させて被保険者としたうえで、役員報酬額を上回る“会費”を徴収する(当該個人事業主はそれで社会保険料を削減できる)法人が見受けられ、問題視されている。
 厚生労働省は先ごろ、こうした脱法行為を認めない旨の通達(R8.3.18保保発0318第1号、年管管発0318第1号)を発し、適正な取り扱いを徹底することとした。

 ところで、この件は、意図的に制度を悪用した者に対する行政指導に止まらない可能性がある。
 というのも、多額の会費を負担させるのは論外としても、役員報酬以外に所得のある者を役員に就任させている会社は少なくないからだ。そうした会社は、当該役員が被保険者となりうるのか、改めてチェックしておく必要があるだろう。

 被保険者となるか否かは、その役員としての業務と報酬の両面から判断される。具体的には、次のようなケースでは被保険者にならない。

【被保険者とならないケース】

① その業務が経営参画を内容とする経常的な労務の提供に該当しない
  ・他の役員との連絡調整や従業員に対する指揮監督に従事していない場合
  ・求めに応じて意見を述べる立場にとどまっている場合

② その報酬が業務の対価としての経常的な支払いに該当しない
  ・役員会等への出席について支払われる報酬等
  ・旅費など実費弁償的な支払い
  ・退職手当(毎月の給与等に上乗せして前払いされるものを除く)

 逆に、これらに当てはまらない場合、すなわち、「その業務が経営参画を内容とする経常的な労務の提供に該当」かつ「その報酬が業務の対価としての経常的な支払いに該当」する場合には、被保険者となる。
 多くの会社は、こちらの、被保険者になるべき者を被保険者としていないことの方に気を付けるべきかも知れない。

 実際に役員が被保険者になるか否かは、保険者(健康保険組合または健康保険協会・日本年金機構)が個別具体的に判断するところだが、どちらであるにせよ、会社としては正しく適用させなければならない。



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